「楽しく自己表現できること」

夜の渋谷。
普段からカオスな渋谷が、更にカオスさを増していく、そんな時間帯に。

しっかり話を聞くのは、本当に久しぶり。気がつくと、僕は社会人になっていて、その間に彼も色々な場所で様々な経験をしていたよう。

「ひたすらに楽しいですね」

イマココの気持ちを、躊躇わずに、真っ直ぐに、そう答えてくれた。今年の春に大学を卒業し、社会人になった、にっしー。今は都内のIT企業にて、アプリを使ったヘルスケア事業に携わっている。

仕事とプライベート、どちらも充実している。特に仕事が充実している背景には3つ要因があると話す。

「一つ目は成長実感ですね。一定チャレンジングなタスクやアサインはあるのだけれど、それを通して、一つ一つできなかったことができるようになる、成長実感があります。」

たくさん失敗して良いし、挑戦して良いし、その過程で成長していく風土があるという。

「二つ目は、一緒に働くメンバー。メンバーが尊敬できて、一緒に働けてよかった、そう思える方が本当に多いんです。」

上司やメンバーは自分がどうしたいのか、どういう状況で何に悩んでいるのかにちゃんとフォーカスしてくれる。しかし、一方的に、相談に乗ってもらうだけの関係ではない。

「すっごく生意気なんですけれど、上司が苦手な部分を自分がサポートできている実感があります。」

上司はビジョンや夢を描くのが得意。一方で、にっしーは、実現するためにはどうすればよいか、細かく実行していくのが得意。合わさるとちょうど良い関係になっている。

「お互い信頼しあって仕事している感覚。信頼というのはキーワードかもしれないです」

そう話す。

「三つ目は、自分のやっている仕事がたとえ小さくても、ユーザーや社会のためになってる実感があることです。」

例えば、と続ける。

「アプリを使っているユーザーと対面し、声を聞いて反映する。その結果、ユーザーの健康に少しでも貢献できたり、実際に数字が伸びたりするのが嬉しいんです。」

もう一つ、にっしーが社内で行なっていることがある。

「コーチングのプロジェクトを社内で立ち上げています。」

大学の時、人材開発(コーチング)を専攻していた、にっしー。

「毎週一時間、コーチングを受けたいという方々と定期的にセッションをして、その方々の変化に携われるのが嬉しい」

そう言って、笑う。


楽しく自己表現できる社会

今、にっしーには抱えている想いがある。

「世の中に生きる人々がより自分に自信を持ったり、自己肯定感を持って、楽しく自己表現しながら生きられる。そんな社会をつくっていきたい」

そして、そのために、今の活動が繋がっていっている感覚がある。

「今は小さなアクション、コーチングやアプリの改善だけれど、将来的に目指したいこと、人々の自己表現を支える仕組みを作るというところに一歩づつ近づいている感覚があって楽しい」


カルチャーになる

話は趣味のことに移っていった。

趣味がカルチャー全般で、特に音楽とかアートが好き、と話すにっしー。そもそも、にっしーにとって、カルチャーとは何なのか、何で好きなのか、話してくれた。

「カルチャーがなんで好きか。もちろんコンテンツとしての魅力もありますが、あえて哲学っぽく言うと、人々の自己表現の塊がカルチャーになる。。同じ表現なんて一つもないじゃないですか。表現として生まれた音楽やアート、ファッション、また個々人の感情や思想が何らかの形で集合する中で自然と、もしくは意図的に区分けされることによってカルチャーが生まれるわけですよ」

例えば、と話を続ける。

「きゃりーぱみゅぱみゅみたいな服装の人が一人しかいなければカルチャーにはならないけど、それが大勢集まったらきゃりー系の原宿カルチャーになるみたいな。その中で、僕はそのカルチャーの全体観にも興味があるし、一人一人がどういう自己表現がしたくて、どうすれば実現できるのかを考えるのが好き」

サブカルとかアート、音楽が好きで、そこに時間を使えていること。その状態こそが、にっしー自身も自己表現ができる感覚なのだとか。

「それが自分の成し遂げたい目標とも繋がっている実感があって生きれています」

外では、仕事終わりにライブハウスに行ったり、休みの日にフェスに出かけたり。家では仲良い友人とラジオやったり、ひたすらゴロゴロして雑誌や映画を見まくったり。仕事とは全く関わりがない人と交流するのが楽しいですね。

今年参加したフジロック。友人たちと。

一方で、それらを、仕事としていくことには、怖さみたいなのがあると話す。

「ディズニーランドを愛する人全員がオリエンタルランドに入りたいわけではないですよね。そんな感じ。単純にく「好き」という感覚が強いんですよね」 

にっしーにとって、趣味という感覚が一番良い距離感。

「現実的な数字とか売り上げとか実績とかになった際に、苦しくなるんじゃないかと思って…今のところは趣味でやっているのがしっくりきている。じゃあ仕事はなんなのかってなった時に、そこじゃない部分の自己表現、人材開発とかがしっくりくる」

現地のサブカル音楽を求めて東南アジア一周したときの写真(カンボジアの音楽バーのマスターと)

人材開発に携わっていきたい、にっしー。今自身が携わっているヘルスケア関連の事業はどう捉えているのか、気になった。

「よく聞かれることが、人材開発系やりたいなら、なんで人事部行かなかったの、とか人材系の会社にいかなかったの、とか」

ただそこには、にっしーにとって、歩みたいステップがある。

「会社という枠組みで組織開発や人材開発をやりたいですとなった時、その前段としてまず会社が持っている事業を理解するのって大事だなと思うんです。端的に言うとどうやって稼ぐの?とか、グロースさせるの?とか、ちゃんと考えていないと説得力や納得感ないなと思って。」

納得感の理由を更に話してくれた。

「なんでかって言うと、もちろん社会貢献も目指しますが、極論会社って事業を成長させて、利潤を上げるためにあるわけじゃないですか。人じゃなくて事業を成長させるところもちゃんと学んでおいた方が、最終的に自分が人や組織にアプローチする時に、色々できることが増えそうだなって思ったんです」

だから、今の会社でも、新規事業よりのところを志望して、一から組織や事業を作っていくところを現場で感じたかったのだと話す。それがうちの会社だとたまたまヘルスケアだったんです。

「会社をやる以上、事業と人・組織は繋がっていて完全に分けるのは難しいと思うんですよ。例えるなら、自転車が会社だとすると、前輪がビジネス・事業で、後輪が組織・人。後輪の人とか組織を良くしていく人になりたいけれど、まずは前輪のビジネス・事業を理解しておかないと、うまく回らないと思うんです。」

理想は組織もちゃんとまわって、事業もちゃんと回る、この2つがちゃんとまわるとみんなハッピー、そう話す。

そして、その2つに対して、にっしー自身がどのように関わっていきたいか、時間軸と共に未来の像がある。

「目安としてわかりやすい指標としては、20代は事業にファーカスして、30代は組織や人、40代以降はその先にあるもっと根深い社会課題(今の自分が見えていないもの含め)にフォーカスしたい。本当に自分が解決したい課題が明確になってきた頃、「自己表現」や「楽しい」とも絡めながら、その課題全体を解決できる仕組みを作れる人になりたいですね」


渋谷だから、しょうがない

カルチャーを語る上で、渋谷は避けては通れない。にっしーが今働く渋谷は、まさしくカルチャーそのものだ。

「働く環境が渋谷なので、カルチャーに溢れているじゃないですか。面白い街にいると思うんです。」

例えば、センター街やハチ公前。確かに、そこには、外国人から女子高生から、飲んだくれているおじさんからナンパしている人まで色々な人がいて。でも逆に奥渋なんかはすごく落ち着いた雰囲気だったりする。渋谷の街ではなんだかカオスに、みんな、好きに楽しんで生きているのが見てとれる。

「交わっているのか、交わってないのか分からない。その絶妙な感じ。渋谷だからしょうがないか、オッケーだよねと言われることが多いと思うんです。同じことを清澄白河でやったら、は?ってなるわけ。でも、渋谷なら許される。そのカオスさが渋谷の良さであり、魅力だと思います。」

一歩外を出れば、そこはカルチャーで満たされている。その環境は、まさしく、にっしーにピッタリな世界に違いないだろう。

渋谷にて

ワーク100 ライフ100

正直あんまり人と比べない、と話す、にっしー。

ロールモデルみたいな人はいるのか、聞いたら、少し困った様子で考えた末に答えてくれた。

「尊敬している人はいるけれど、憧れはいない…憧れはその人になりたい、重ねていることになる。その状態は、あんまり無いですね」

そこには、にっしーの中に、根本、僕とあなたは違うと思っている、という考えがあるからだ。

「変に重ねたり、その人になろう、じゃなくてその人らしさに興味がある。だから、自己表現というワードにつながる」

一方で、この人のこの部分は「憧れる」、そういう文脈で話してくれたのは、大学在学時、海外インターン中に出会ったホストファーザー。

「フィリピン系のアメリカ人で、世界的にも有名な企業で熱心に働いている方でした。」

にっしーは、その方の家で5週間ぐらいホームステイをした。

「その方は、仕事の上では、自分のミッションとか社会への課題意識をすごく持って、自分なりの意見も持っているし、他者の話を聞いてコラボレーションもするし、とにかくバランス感がすごかったです。」

しかし、熱心に仕事はやるが、それだけではない。

「家に帰った瞬間、仕事はどうでもよくて、趣味と家族のことしか考えない。そのオンオフがすごく良い。」

ホームファザー・マザーとルームメイト(シアトルにて)

「どっちが大切なんですか、とか、あなたの人生で何が大切なのですか、と聞いた時にそれはもちろん家族だよと言うんです。根本、家族が大事で、外にいったら仕事に集中!それにすごく共感しました」

にっしーが、共感をした背景には、どっちも大切にし続けるということに対しての諦めがあったからだと話す。

「どっちかになるだろうと、100、100は無理だろうと思っていたんです。正直、その辺にいる(敢えてそういう言葉を使うと)仕事にしか興味がない身勝手な『おっさん』とか、会社は大事かもしれないけれど、パートナーのことをちゃんと考えているのかとか分からないし、子どもにもただ自分の考えを押し付けているだけだったりするし。。」

その考えを、良い意味で壊してくれたのが、ホストファーザーだった。

「その人はちゃんと、どっちも全力。全力で楽しくやっている。かといって自分を殺しているわけではない。自分のありたい姿です、みたいなのが伝わってきました。」

「最近ワークとライフが繋がっていて、それが良いと言う人もいるじゃないですか。それのイメージは、ワークとライフが繋がって、100と100で常に200です、というイメージなんですよ。」

ただ、にっしーの考えは、そのよくある一般のイメージとは少し異なる。

「僕としては、そこは繋がる必要がなくて、ワーク100、ライフ100、合計200みたいな感覚。別の世界観の方が、なんか僕は楽ですね。」

そして、その考え方は、今の会社に入った理由にも関わってくるという。

「仕事だけじゃなく、プライベートでも社員と繋がるべきみたいな会社もあると思います。、でも今の会社は、みんな自分の生活あるじゃんみたいな感じ。そもそも飲み会がそんなに無いし、あっても飲みたい人が好きで飲んでいるだけ。強制する雰囲気はまったくない。ある種欧米的な雰囲気だなと思うし、気楽で生きやすいんです。」

最後に、にっしーなりの自己表現について聞いてみた。

「今やりたいことがちゃんとできていることが自己表現に直結している。自分が体現してる、〜が好き!興味がある!と人に伝えられることが大事。まさに今の自分を楽しく話していること、この状態が自己表現できている感覚です」