「見たことない景色を見る」

今年も春が来た。
暖かい風に包まれ、新年度の始まりを実感する日々。

「自分にとって豊かで居心地の良い気持ち」

イマココをそう答えてくれた。

ワクワクもある。一方で不安もある。
そう感じている、かずまの話を聞いた。


結局は主観


前回かずまの話を聞いたのは約2年前。
季節は春ではなく初夏。すでに蒸し暑さに包まれつつあった夜のオフィス街だったと思う。

「その時から変わっていることもあれば、変わらないこともあります。ただ総じて細かい感情の土台にあるのは、自分の豊かな構えが徐々に見つかってきて満たされている感覚です」

何が豊かな構えなのかは人それぞれ異なると、かずまは続ける。

「結局は主観なのかなと思っています。どんな人と関わっていても、どんな場所にいても、自分が結局どう感じるか次第だと思って。その自分がどう感じるかの”自分”のアンテナを好きになってきているんだと思います」

かずまの場合、その構えは家族や友人など周りの人との良い関係性だという。それは、色で言うとオレンジと黄色の間、穏やかさを感じさせるものなのだと話す。


目の前の人のことを考えるように


豊かで居心地の良い気持ち。その土台には、かずまが元々そういった性質、性格であることも関係している。

「GoodかBadかというとGood。根本にあるのは善良なのかなとは思います。笑」

こういった変わらない部分がある一方、最近になって変化した点もあるという。

「自分の成長にあまり目を向けすぎなくなりました。自分のスキルが伸びる、キャリアをアップさせるなど気にはするけれど、前以上にそういった感情は持たなくなりました」

今、向けているのは目の前の人だ。

「目の前の関わっている人が、どういった感情を持つのかに目を向けるようになりました」

その想いが生じた理由は余裕ができはじめたことにある。

というのも、かずまは朝渋という活動に去年の6月頃から参加している。朝渋とは朝活を行うコミュニティ。それに参加したことで、かずまに行動や考え面での変化があったという。

「生活習慣がめっちゃ良くなったんです。早起きが習慣になって、時間もできて、コツコツ積み上げることができるようになりました」

時間ができるようになったことで余裕ができた。その結果、考えること、できることの幅が広がったといいます。

「余裕ができたので、自分のスキルを伸ばすこともできるし、もう少し一緒にいる人がハッピーになる関わり方もできるようになりました」


枠を超えたものに挑む


かずまは今年、あるチャレンジをする。

6月からモンゴルに行くのだ。

「時間の余裕ができて体をトレーニングしていたら、うずいてきたんです。でかいことをやりたい、今の自分が到達できないところに行きたいなって」

そのターゲットになったのがモンゴルだった。

かずまがモンゴルで挑むのはマラソン。
ただ、そのマラソンは一般的にイメージするものとは異なる。

なんと、その距離は250キロ。

250キロという単位は中々想像がつきにくいかもしれませんが、フルマラソンを6、7日連続で走ると考えるとその凄まじさが分かります。
加えて、走る場所も一般の道ではなくゴビ砂漠の上というのです。

今の自分の枠を超えたものに挑みたくなる性分だと話すかずま。この挑戦は自分が自分のいたい状態にいるためでもある。

「自分にとって”こういう状態でいたい”というのが、挑戦している状態です。それは前から変わりません。現状維持はしたくなくて、常に良い状態でいたいんです」


挑戦することで、かずまが体感したいもの、見たいものがある。

それは景色だ。

「挑戦することで見たことない景色が見れると思っています」

かずまの中で、景色には二種類の概念があると。ひとつは単純に目に映る景色、もうひとつが自分の内側から見る景色。

かずまが体感したいのは後者。

「この景色に至るまでに経てきた時間、かけてきた労力などがつくる景色もあるなと思っています」

それは今回のモンゴルでの挑戦でも同様です。

「250キロの砂漠を走り切った後の景色ってどんな景色なんだろうって思います。めちゃくちゃいい景色を見れそうだなって」

それは砂漠に車で行って見た場合と、景色自体は同じでも、抱く感情は全く異なるものになるだろう。

「そういう感動を知っていると、この後の人生でも良いものになるなと思って。それがモチベーションになりますし、そういう景色を知っているかいないかで、次のチャレンジの跳躍力を変えると思うんです」

そう笑う。


モンゴルの先にある場所


実はモンゴルのマラソンには続きがあります。

かずまがモンゴルで参加するマラソンは、「THE RACING PLANET」という。
名前のカッコよさはさることながら、すごく冒険心、子ども心をくすぐる仕組みがあるのだとか。

「世界で常時開催しているのが3つ、今年は4つの場所で開催しています。そのうちの2つを制覇すると南極に行ける資格を得られるんです」

かずまが見据えているのも、モンゴルの先にある、その場所だ。

「モンゴルは自分の大きな挑戦としてあるけれど、目指しているのは南極です」

南極走った人は日本にあまりいないだろう。だからこそ、その経験は子どもができた時にも活きてくる。

「子どもができた時、子どもの挑戦を後押しできるのって挑戦しているお父さんにしかできないと思うんです。だから自分自身も挑戦したいなって思っています」


意思ある未来は過去を変えていく。

かずまが以前インタビューで話していた言葉だ。

「意思を持って未来をつくろうとしているのかもしれないです。黙ってコロナ禍をしぶとく忍耐するよりも絶対いい時間になるなって」

今振り返ると、改めてそう感じるという。

「その言葉を前も言っていたのは良いこと言っていたなと言う感じです。笑」

まさに今、意思を持って未来を変えようとしている、かずまだからこそ実感しているのかもしれません。


走るのが楽しい


今かずまはモンゴルに向けてトレーニングに励む日々。毎朝25キロ、月200〜250キロもの距離を走るという。生活の中心がランニングで、本業が何かわからなくなっている、そう笑います。

かずまが、これだけの距離を毎日走り続けられるのには理由がある。

「朝早く起きて時間が作れるようになったのもありますが、シンプルに走るのが楽しいんです」

今は楽しい一方で、最初からそういう状態だったわけではない。

「最初はモンゴルに向けて頑張ろうと思って、辛かった部分もあったんですけれど、続けていく内にシンプルに走っている時間が楽しい、高揚感があると思えるようになったんです」

この感覚は、受験勉強の時に抱いたものに近いという。

「受験勉強の時も、最初は早稲田に受かりたいと思って勉強していました。ただ、続けているうちに勉強自体が楽しくなっていたんです。その状態って大切だと思います」

俗に言うフロー状態。マリオでいうスーパー無双モードとたとえます。

「周りの認識と自分の認識が逆で、周りは辛そうなのに自分は楽しいと思えることって得ですよね」

かずまは笑う。

「そういう状態が集まる個人が増えれば豊かになっていくと思います。走るのが苦手なのに頑張って走るとか、そういうのが様々な場面で起きているなって。努力は夢中には勝てないじゃないですけれど」

かずま自身、モンゴルの話を周囲の人にするたびに辛そうといった反応を受け取る。一方で、かずまの感じていることは少し異なったものだった。

「辛そう、大変そうと口を揃えて言われて…辛いこと自体は事実だけれど、実際ワクワクしている面もあります」


最後に残るのは・・


仕事でもワクワクする状態を見つけられたらいい、かずまは、そんなことを考えているという。

ただ、焦ってはいない。

「仕事では見つけ切れていないものの、”こういう状態でいたい”が仕事以外で見つけられています。だから頑張れば仕事でも見つけていけると思っています」

具体的な仕事は決められていないものの、イメージはあるという。

「自然の中で働きたい感覚はあります。一方で、スタートアップ的な熱狂・熱中も好き。一緒に物やサービスをつくったり売ったりすることで幸せになる人がいる、そんな状態を目指したいです」

今はまさに、その状態に向けて今は身を委ねている時期だ。

「その時心が動いたことに素直に、今は挑戦は続けたい」

モンゴルの砂漠マラソンで働けるようになっているかもしれないし、そう笑います。

「やっている人が少ないことに挑むのはワクワクします。そういう経験をしてきた人は素敵だなって思うんです。自分も素敵な人間になりたい、だから挑戦しています」

そして、その先には、かずましか見ることのできない景色があるに違いない。

「色々な情報や知識は簡単に手に入ると思います。だから、最後に残るのはその人の体とか、その人の時間を一生懸命使って得た経験・感情・体験だと思うんです。そういうものをモンゴルに限らず増やしていきたいです」


あとがき


自分の枠を超えて挑戦したくなった時、海外に行きたくなると話す、かずま。
大学の頃もベトナムに長期で行ったり、他にもきっと様々な挑戦をしてきたのだと思います。

その度ごとに、見たことない景色を自分の内側から見てきたのかもしれません。そして、それらが大切な過去になって、今と未来への養分のようになっているのかもしれません。

モンゴルから帰ってきた時に、どんな景色を見たのか、その景色を見たかずまが、どのような姿になっているのか、今から楽しみです。(れい)